あなたが趣味でレザークラフトを愉しんでいて、今後も同じように「愉しく続けていければ満足!」というなら、この記事は読み飛ばしてもらっても構わないかもしれません。
ですがレザークラフトを、副業または本業にして収益を得ていきたいと真剣に考えているなら、これから作っていくアイテムは、カバンorサイフのどちらかに絞り込んだほうがいいでしょう。
なぜならカバンとサイフとでは、ものづくりのジャンルが違うからです。
もしかしたらすでに、カバン作りとサイフ作りとがまったく違うことを実感していて、ものづくりの方向性に悩んでしまっている人もいるかもしれませんね。
しかしもう悩まないでください。
この記事では、ものづくりの観点からカバンとサイフのジャンルの違いについて解説していきます。
なので読み終えたときには、自分がどちらの(カバンorサイフ)ものづくりに向いているのかがわかり、方向性に悩むこともなくなるでしょう。
あなたはカバン派ですか?サイフ派ですか?
ザックリとですが、食に例えるなら和食と洋食の違いくらいはある(私は食のプロではないのでおそらく、、、)と思っています。
食の世界でプロの料理人を目指すときには、日本料理とかフランス料理とか、まずは食のジャンルを決めてからその料理の勉強をスタートしますよね。
これはレザークラフトで、プロを目指すときにも同じことが言えます。
今年に入ってから、新型コロナウイルスによる巣ごもり生活が続いていたからなのか、私のもとには「アフターコロナにはレザークラフトのワークショップをやってほしい!」といった声が多く寄せられるようになりました。
一般的にレザークラフトといえば、カバンやサイフ(または革小物)作りをイメージすると思います。私は自分の経験値から、カバンとサイフのどちらも教えることはできますが、、、(なかなか優秀でしょ^^)
しかし、クツやジャケットのものづくりを教えてほしいと言われても、私はこのどちらも型紙すら作ったことがないので教えることはできません。
このようにプロでさえ、同じ革の業界内であっても専門外のアイテムは作り方がわからないといったことはよくあるのです。
「あなたはカバンとサイフのどちらを作ってみたいと思っていますか?」
実のところ、製品の出来栄えを左右するのはポイントを抑えているか否かです。
ですから、最初に述べたカバンとサイフのものづくりにおけるジャンルの違いは、抑えるべきポイントさえ理解してしまえば、案外簡単にクリアできてしまうので安心してくださいね。
では、その抑えるべきポイントを踏まえて、カバン向きかサイフ向きかも解説していきます。
大雑把な性格はカバン向き?
2005年頃の私は、イタリアの某ブランド(誰でも知っている超有名な)の修理を定期的に請け負っていました。
いつも届く修理品の中には、呆れて笑ってしまうようなものもありましたので、その一部を紹介します。
たとえば、
『カバンのポケットの底が縫われていなかった』
『付属の金具が固定されていなかった』
『ブランドのタグが付いていなかった』
などなど、
はじめは、「偽物のコピー品?」「日本とイタリアとの国民性の違いかな?」などと思っていましたが、正規のギャランティーカードが付いた修理品ですし、スーパーブランドだけにありえないことです。
一方サイフの修理では、このような呆れた内容はほとんど見当たらなかったたので、おそらく作り手(カバン職人)がもつ意識の問題なのだと思います。
カバンの縫製は1ミリ歪んでも、その箇所を目を凝らして見ないかぎり気がつかないでしょう。もし見つけたとしても、単なる誤差と考えて何も気にならないかもしれません。
ですからカバンは、ミリ単位の繊細さよりも感性を活かしたものづくりに向いていると言えるでしょう。
もしコストの面から判断したいときには、革と工賃を重視して考えてみてください。
革のコストは使った数量から算出しますので、同一単価の条件ではより多くの革を使用するカバンのほうがサイフよりもコスト高になりがちです。
工賃のコストはかかった時間から算出します。手縫いの縫製では、サイズが大きいほど時間と体力を消費しますので、工賃もカバンのほうがコスト高になるでしょう。ただし工業用ミシンを使って縫製できるときには、カバンでも楽に時間短縮できます。
他にカバンの付属品には金具類(ナスカンやバックル、ファスナーなど)をはじめ、飾りの部材の種類も豊富に揃っていますので、飾る愉しみがあることも付け加えておきますね。
几帳面な性格はサイフ向き?
私がサイフをはじめて作ったときには、あまりの完成度の低さに落ち込みました。
元はカバンから始まったものづくりですので、とりあえずカバンと同じ要領でサイフを作ってみましたが、あちこちが歪んで満足な出来上がりにはなりません。
縫製が云々というより、最初の型紙を切るときからうまくいかず、どうしても直線が歪んでしまうのです。
ですからしばらくの間は、正確な直線を切るための練習を繰り返しました。
『たかが0.5ミリ、されど0.5ミリ』
カバン同様にサイフの型紙を作る理屈はわかっていても、1ミリ以下の歪みを克服できなければ、歪んだサイフが出来上がってしまいます。
サイフにカードを入れたら不揃いだったり、ホックの位置が0.5ミリでもズレたら本体が歪んで見えてしまうので、すぐに不良品だとわかります。
ですからサイフ作りは、とても繊細なのです。
もしあなたが色々な種類の革を使ってものづくりを愉しみたいのであれば、サイフはカバンよりも融通が利きますのでオススメです。
革の元は生き物ですので、少なからず傷や穴などのダメージは付きものです。
牛に比べて小さいサイズの羊や山羊、とくに豚の革にはダメージが多く目立ちます。ヘビやワニ、トカゲといった爬虫類の革にも目立ったダメージがあると、それだけでカバンのサイズには使えないことがあります。
傷や穴を風合いとして生かす商品もありますが、まだまだ不良品扱いされるケースが多いので、ダメージが目立つ革を使うときにはサイフのような小物作りを愉しんでみてください。
まとめ
冒頭ではカバンとサイフのものづくりの違いを、食のジャンル(日本料理とフランス料理)の違いに例えてみました。
いずれもプロの確かな技術を土台にしていることに違いはありませんし、習得したものづくりの技術は、カバンとサイフのどちらにも応用できます。
私の経験を踏まえてアドバイスするなら、はじめにサイフの繊細な基礎を習得してから、カバンのレザークラフトにチャレンジすることをオススメします。
しかしこのアドバイスの目的は、あくまでもレザークラフトで収益を得ることですので、趣味でレザークラフトを愉しむなら、サイフだって少しぐらい歪んでも構いませんよね。
これからもレザークラフトのある生活をお愉しみください。
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